平成26年6月号  ウルトラシリーズ(その3 メトロン星人)

「地球を壊滅させるのに暴力をふるう必要はない。人間どうしの信頼感をなくすればよい。
人間たちは互いに敵視し、傷つけあい、やがて自滅していく」

場所は下町の工場地帯の一角にある古ぼけたアパート。
怪しい男の跡を追いかけてモロボシダンがアパートの一室に入ると、そこにいたのはメトロン星人。

 

この風貌を見てさすがのダンも「おっ」と一瞬たじろいだが、部屋の真ん中にあるちゃぶ台の前にメトロン星人が座ると、
ダンも座り、メトロン星人に降伏を求めた。
しかし、そこでメトロン星人がダンに語ったのが、冒頭のセリフ。メトロン星人の考えた地球侵略計画だ。

「どうだ、いい考えだろう」と自慢したメトロン星人であったが、頭は良くても格闘は強くなかった。
ほとんど闘わずしてウルトラセブンのアイスラッガーとウルトラビームの前にあえなく敗れてしまった。

戦闘シーンはあっけなかったが、いかにも昭和を感じさせるアパートのたたずまいといい、夕陽を背景にウルトラホーク1号と宇宙船が展開する息詰まる空中戦といい、
ウルトラセブンと巨大化したメトロン星人が対峙する夕暮の下町のジオラマといい、どのシーンも絶品ぞろいだ。

それに最後のナレーションがまたひねりが利いている。
「ご安心ください。この話は遠い遠い未来の話ですから。なぜって、宇宙人が狙うほど地球人は信頼していませんから」

第1次世界大戦が起きてから今年で100年。
今でも世界の各地で戦争や紛争があり、軍事的衝突の緊張も高まる今の状況をメトロン星人が見たらどう思うだろうか。
もしかしたら宇宙のかなたで人類が自滅するのを笑いながら待っているかもしれない。

メトロン星人前(左)と後ろ(右)
   

(メトロン星人が登場するのは、ウルトラセブン第8話「狙われた街」です)

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