ピロリ菌とは |
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ヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ菌)は人間の胃の中に住んでいる細菌で、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因となっているということが近年明らかになってきています。この菌の特徴として、ウレアーゼという酵素を持つことによりアンモニアで胃酸を中和することが出来るので、胃の中のような極めて高い酸度の環境でも棲息できるのです。 |
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ピロリ菌の検査 |
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ピロリ菌に感染しているかどうかの検査方法には大きく分けて二つあり、胃内視鏡検査が必要なものと必要でないものがあります。 |
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胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対するピロリ菌の除菌治療 |
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現在日本では胃潰瘍・十二指腸潰瘍についてピロリ菌の除菌治療が保険で認められており、当院でもピロリ菌陽性の胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対して除菌治療を行っています。なぜ除菌治療を行うかといいますと、ピロリ菌に感染したまま潰瘍が治ってもまた再発する可能性があるからです。ピロリ菌の除菌に成功すると、 除菌治療は、制酸剤であるプロトンポンプ阻害剤(PPIと略します)と抗生物質を組み合わせて行います。実際にはPPIにランソプラゾール、抗生物質にアモキシシリンとクラリスロマイシンという3種類の薬を1週間服用していただきます。副作用に関しては、最も多いのは下痢や軟便です。ただし治療を中止しなければならないほどひどい下痢をする方はほとんどいません。 |
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ピロリ菌と慢性萎縮性胃炎・胃癌について |
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日本人はピロリ菌の感染率が高く、多くの人が慢性萎縮性胃炎にかかっています。また、慢性萎縮性胃炎の患者さんはそうでない患者さんと比較して胃癌の発生率が高いことも明らかになってきました。病気の早期発見のために胃の定期健診は大切です。 また、2013年2月から慢性萎縮性胃炎に対してもピロリ菌の除菌治療が保険で認められました。内視鏡検査を受けてピロリ菌が見つかれば、保険で除菌治療が行えるようになりました。 |
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【慢性萎縮性胃炎】 |
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幼少期にピロリ菌に感染すると胃粘膜に慢性の炎症がおこりはじめ、年余の経過で胃粘膜萎縮が起こります。これは胃の腺組織(胃酸、粘液あるいはガストリンというホルモンを作る細胞がある)が徐々に減少して胃粘膜が薄くなっていく現象です。胃粘膜萎縮は胃の出口付近(幽門部)から始まり、次第にゆっくりと胃全体に拡がっていきます。 慢性萎縮性胃炎で問題となるのは、慢性萎縮性胃炎を発生母地として胃腺腫や分化型胃癌といった病気が出てくることです。ですから重要なことは、定期的に胃の健診を行ってこれらの病気を早期発見することです。 |
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【化生性胃炎】 |
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慢性萎縮性胃炎がさらに進むと、今度は萎縮した胃粘膜が腸の粘膜に置き換わる現象が起きてきます。これを腸上皮化生といい、内視鏡で観察すると粘膜の凹凸が目立ってきます。この状態になってくるとさらに胃癌発生のリスクが高くなると言われています。 化生性胃炎は慢性萎縮性胃炎以上に胃の定期健診が必要です。 |
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【鳥肌胃炎】 |
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胃の出口付近(幽門前庭部)にまるで鳥肌のような顆粒状粘膜を認める胃炎で、ピロリ菌の感染と関係があると言われています。この鳥肌胃炎は小児から若年者においてのみ見られることから、ピロリ菌感染によって慢性萎縮性胃炎に至るまでの過程における胃炎の初期像であろうと考えられています。 写真 : 幽門前庭部に「鳥肌」と言われる特徴的な顆粒状粘膜を認めます。 |
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