西川医院

生活習慣病

生活習慣病とメタボリックシンドローム

「生活習慣病」とは、毎日のよくない生活の積み重ねによって引き起こされる病気の総称で、高血圧、糖尿病、高脂血症を代表として脳血管障害(脳卒中)、心臓病などさまざまな病気があります。これらの病気は基本的に生活習慣の改善をはかることが最も重要ですが、必要に応じて薬物治療も行います。

また最近「メタボリックシンドローム」という言葉をよく耳にしますが、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病はそれぞれが独立した別の病気ではなく、内臓脂肪型肥満(内臓に脂肪が蓄積した肥満)が原因であることが分かってきました。このように、内臓脂肪型肥満によってさまざまな病気が引き起こされやすくなった状態を『メタボリックシンドローム』といい、治療の対象として考えられるようになってきました。

【BMI(body mass index : 体格指数) = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)とは・・
これは「肥満指数」とも呼ばれ、自分の体が肥満なのか普通なのかあるいは痩せすぎなのかを知る目安になります。一般的に、BMI 22が最も病気になる確率が低く理想的で、BMI 25以上だと肥満です。

〈メタボリックシンドロームの治療〉
1.エネルギー摂取の制限
 ・肉、油脂、お菓子類を減らす。
 ・野菜や海藻、きのこ、乾物をしっかり摂取する。
2.食習慣を改める
 ・1日3食きちんと取る
 ・3食とも摂取量は均等に。夜のウェイトが多いと太る!!
 ・きちんと噛んで味わいながらゆっくり食べる
 ・寝際に食べない(寝るまで3時間は空ける)
3.有酸素運動と筋肉運動
 ・有酸素運動(体脂肪を燃やす) : ウォーキング、軽いジョギング、ゆっくり泳ぐ水泳など
 ・レジスタンス運動(基礎代謝を高める) : ジムの機械運動やおもりを使った運動
(水中歩行は有酸素運動とレジスタンス運動の両者の要素があり、肥満糖尿病患者さんにとって非常に有効)

当院では血液検査、超音波検査などを行って内臓脂肪型肥満の評価を行った上で、患者さんと一緒にライフスタイルの見直しを行いこれらの病気の治療のお手伝いを致します。

夜桜
メタボリックシンドローム

糖尿病

糖尿病とは、膵臓で作られて血糖値を下げる働きをするインスリンというホルモンの分泌が悪かったり、その働きが不十分であったりして血糖値が上がってしまう病気です。軽い糖尿病で少々血糖値が高くてもあまり自覚症状がないため、きちんとした治療を受けずに過ごしてしまうことがあります。その間体の中で何が起こっているかというと、目の網膜や腎臓の細い血管が着実に冒されて近い将来糖尿病網膜症で失明したり、糖尿病腎症で腎不全となり人工透析をしなければならなくなるのです。また神経も冒されて糖尿病神経障害も進み、手足のしびれや足の潰瘍、壊疽(足が腐ってしまい切断を余儀なくされることもあります)を起こしてしまいます。
糖尿病は自覚症状がほとんどないままに合併症が進行する、確実に体を蝕む恐ろしい病気なのです。ですからこれらの合併症が進行しないうちに、日頃から血糖コントロールを行うことは大変重要です。

〈糖尿病の種類〉
1型糖尿病 : 膵臓にあるインスリンを作るβ細胞が破壊されてインスリンを作れなくなったため、絶対的にインスリンが不足する状態であり、小児期に発症することが多い。
2型糖尿病 : インスリンの分泌が悪かったりその働きが不十分であるために血糖値が上がるもの。生活習慣が関係しているのは2型糖尿病で、我が国の95%以上はこのタイプ。
その他のタイプ : 他の病気によるものや、妊娠に伴うものなどがある。

〈糖尿病の治療〉
治療として最も重要なのは食事療法および運動療法です。これで良好な血糖コントロールが得られない場合は薬物療法を併用します。
【食事療法】
エネルギー摂取量 = 標準体重(身長(m)×身長(m)×22) × 身体活動量
 軽労作(デスクワーク、主婦など)  25〜30kcal
 普通の労作(立ち仕事が多い職業)  30〜35kcal
 重い労作(力仕事の多い職業)    35kcal    (標準体重1kgあたり)

【運動療法】
毎日1人でできる運動を選び、毎日が無理なら2日に1回は行うようにしましょう。
運動は1日30分が目安です。ウォーキングの場合は1回15〜30分を目安に1日2回、1日1万歩が目標です。
食後1時間後に行うと食後の高血糖が抑えられて効果的ですが、実生活の中で実施可能な時間のいつでもよいです。
【薬物療法】
活習慣の改善をはかっても血糖値の改善がみられない場合は薬物療法を行います。具体的には経口血糖降下薬やインスリン注射を使います。

院長は東京都医師会主催の「糖尿病予防推進医講習会」を受講しております。また、当院ナースは糖尿病を中心とする生活習慣病の生活指導に自信がありますので患者さんのお役に立てることと思います。

 
糖尿病の合併症

高脂血症(脂質異常症)

高脂血症とは、血液中にコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)などの脂質が増えた状態で、糖尿病と同じく自覚症状に乏しいため放置してしまうことが多い病気です。放っておくと血管の内側に脂質が貯まって動脈硬化となり、将来的に虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)脳卒中(脳出血・脳梗塞)などを引き起こすことになってしまいます。

最近になって高脂血症は「脂質異常症」と名称が変更され、診断基準も変わりました。
(脂質異常症の診断基準)
 高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール ≧140mg/dl
 低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール <40mg/dl
 高トリグリセリド血症   トリグリセリド  ≧150mg/dl

肥満、高血圧、高脂血症、耐糖能障害(糖尿病および境界型糖尿病)が揃うと「死の四重奏」と呼ばれ、虚血性心疾患や脳卒中を引き起こす確率が正常の人の約30倍以上になると言われています。

〈高脂血症の治療〉
治療は食事療法、運動療法および薬物療法で、禁煙も大切です。
【食事療法】
第1段階 総摂取エネルギーの適正化 適正エネルギー摂取量 = 標準体重(身長(m)×身長(m)×22) × 25〜30kcal
第2段階 高LDLコレステロール血症が持続 → 脂質制限の強化(コレステロール摂取量1日200mg以下)
     高トリグリセライド血症が持続 → 禁酒、炭水化物の制限 (総摂取エネルギーの50%以下)
【運動療法】
有酸素運動を中心に1日30分以上、週3回以上を目指す。
お勧めはウォーキングです。体力に自信のある方はジョギングも良いと思います。
適正体重かどうかの評価はBMI(body mass index : 体格指数)を用いる。 BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
BMI 22が最も病気になる確率が低く理想的。BMI 25以上だと肥満です。
【禁煙】
ニコチンは血圧を上げて心臓に負担をかけ、血液中の遊離脂肪酸を増やします。また喫煙すると動脈の粥状硬化を進行させ、HDLコレステロール濃度を低下させるので動脈硬化を促進させます。ですから高脂血症の治療に禁煙は欠かせません。
【薬物療法】
生活習慣の改善をはかっても高脂血症の改善がみられない場合は薬物療法を行います。

死の四重奏

高血圧

高血圧も糖尿病や高脂血症と同じく自覚症状に乏しい病気であり、健康診断などで指摘されて初めて気付きます。自覚症状もほとんどないので放置しがちですが、きちんと治療しないとやはり将来的に動脈硬化、虚血性心疾患、脳卒中などの病気を引き起こしてしまいます。

〈高血圧の治療〉
治療は食事療法として塩分制限が最も重要で、脂質摂取の制限とアルコール摂取を適量にします。また、運動療法、禁煙も大切です。薬物療法としては必要に応じて降圧剤を併用しますが、やはり生活習慣の改善が基本になります。
【食事療法】
食塩制限 6g/日未満
野菜・果実を積極的に摂取する、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える
適正体重を維持する(BMI 25未満を目標に)
※ただし重篤な腎機能障害がある場合(高カリウム血症を来す可能性)は野菜・果実の、また糖尿病がある場合(摂取カロリーの増加につながる)は果物の積極的な摂取は推奨されません。
【運動療法】
心血管の病気がなければ有酸素運動を中心に1日30分以上、定期的に行う
【アルコール制限】
エタノールで男性は20〜30ml/日以下、女性は10〜20ml/日以下にする
【禁煙】
ニコチンは血圧を上げて心臓に負担をかけ、血液中の遊離脂肪酸を増やします。また喫煙すると動脈の粥状硬化を進行させ、HDLコレステロール濃度を低下させるので動脈硬化を促進させます。ですから高脂血症同様、高血圧の治療に禁煙は欠かせません。

(降圧目標)
 若年・中年者・糖尿病患者 130/85mmHg未満
 高齢者          140〜160以下/90mmHg未満

患者さんのなかに「血圧の薬を飲み始めると一生飲まなくてはいけないから・・」とおっしゃる方がいますが、そんなことは決してありません。降圧剤の服用を開始したとしても、その後の生活習慣の改善によって軽い薬に変更したり、薬の量を減らしたり、あるいは飲む必要がなくなることもあります。大切なことは生活習慣の改善なのです。

心・血管系疾患の危険因子

脳血管障害(脳卒中)

脳卒中とは、脳の血管が詰まったり、破れて出血したりして脳細胞に障害が起きることです。症状としては脳が障害を受ける場所によって異なりますが、突然意識がなくなって倒れたり、呂律が回らなくなったり、半身のマヒが起こったりします。

脳梗塞の治療として、脳血管内治療(カテーテル検査で血栓を溶かす治療)が最近積極的に行われるようになってきました。この方法は脳梗塞を起こしてから3時間以内に行わなければならないので、発症早期の診断が必要になります。
脳出血の治療は手術が主ですが、血腫の大きさと場所により異なります。
くも膜下出血は動脈瘤にクリップを掛けてたりして出血を抑えます。

脳卒中の種類

心臓病

生活習慣病としての心臓病は虚血性心疾患で、狭心症・心筋梗塞があります。
心臓病

痛風・高尿酸血症

痛風とは、血液中の尿酸値が高くなると尿酸が体中の関節に貯まって結晶となり炎症を起こす病気です。起こしやすい場所は足の親指、踝(くるぶし)、踵(かかと)、足背などの関節ですが、膝、手の指、肘の関節にも起こります。好ましくない食生活(暴飲暴食、アルコールの飲み過ぎ)や運動不足など生活習慣の乱れが原因です。
高尿酸血症を放っておくと痛風発作を繰り返し、慢性の関節炎から痛風結節ができます。また、腎臓の尿細管などに尿酸が貯まると腎臓の機能が障害されて痛風腎になってしまいます。痛風発作を抑えるだけでなく、痛風腎から将来的に腎不全にならないよう日頃から尿酸値のコントロールを行うことが重要です。

〈高尿酸血症の治療〉
治療の中心はやはり食事療法であり、摂取カロリーの適正化と肥満があれば肥満を改善します。動物の内臓、魚の干物、乾物など尿酸のもとであるプリン体を多く含む食物を制限し、水分の摂取を多くします。水分摂取は痛風腎の予防にもなります。またビールを代表としたアルコールの摂取も控える必要があります。生活習慣の改善をはかっても尿酸値が下がらない場合は薬物療法を行います。
〈痛風発作の治療〉
ひとたび関節炎の発作を起こすと激しい痛みに襲われます。この場合は消炎鎮痛剤を使って痛みと炎症を抑えますが、軽快するには約1週間程度はかかります。

※お酒のプリン体含有量 :お酒の種類によるプリン体の含有量に関してはビールが圧倒的に高く(約4〜7mg/100g)、特に地ビールに多く含まれている傾向(約6〜16mg/100g)があります。発泡酒はビールよりやや少ない(約3〜4mg/100g)ようです。次いで日本酒ですがビールと比較するとかなり少なく(1.21mg/100g)、ワイン(0.39mg/100g)、ブランデー(0.37mg/100g)、ウイスキー(0.13mg/100g)になるとさらに低くなります。最も少ないのは焼酎25度(0.03mg/100g)となっています。(参考資料 : 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン他)

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